第3章 ⽇本⼈の⼀⽣をうつす-1

第3章 ⽇本⼈の⼀⽣をうつす 第3章 ⽇本⼈の⼀⽣をうつす

⼤作『⽇本』にも掲載される、江⼾時代の⽇本⼈の⼈⽣。シーボルトお抱え絵師 川原慶賀が描いたシーボルト・コレクション《⼈の⼀⽣》より10点を展覧。
(画像引⽤:⻑崎歴史⽂化博物館webサイト「川原慶賀の⾒た江⼾時代の⽇本」⽇本⼈の⼀⽣より)


>>⻑崎歴史⽂化博物館「川原慶賀の⾒た江⼾時代の⽇本」
      http://www.nmhc.jp/keiga01/

◆シーボルト・コレクション《⼈の⼀⽣》

【複帯・出産】
右に妊婦が安産を願って着帯する「腹帯」、左に産婆が⾚ちゃんを産湯につける「出産」という命が産まれる2つの⾏事が描かれています。室内の⾒通しをよくするため障⼦が開け放たれ、異なる時間の様⼦を⼀画⾯で描く異時同図が⽤いられ、元は絵巻物であったことが⽰唆されています。

【宮参り】
⼥性が⼦供を⾚い着物で⼤切に抱きかかえながら、男性が傘を差して寄り添っている「宮参り」の情景が描かれています。⻑崎では、男児であれば⽣後31⽇⽬、⼥児であれば⽣後33⽇⽬に、出産が無事に済んだ感謝と⼦の成⻑を祈願するため、⽒神を祀る諏訪神社に参詣したと⾔われています。

【お⾒合い】
桜の咲いた茶屋の店先で⼆⼈の男性が⾜を崩しながら座り、画⾯左⼿からやってくる⼥性⼀⾏と⽬を合わせる場⾯。江⼾時代のお⾒合いは、仲⼈を⽴てて吉⽇を選び、お供を連れた男⼥が茶屋などで遠⽬から互いに⾒て相⼿の容姿や仕草をよく観察するというものでした。

【祝⾔の段取り】
仲⼈が、花嫁の両親に結婚の許しを求めにきた場⾯。江⼾時代の仲⼈は、⾝分の釣り合いや夫婦の利害をよく考慮した相⼿探しから、お⾒合いの段取り、結婚までを様々な儀式に沿って世話をして、そのお礼として結納⾦の1割を受け取っていました。

【結納】
花婿の家から花嫁の家に結納の品が到着し、花嫁の⽗と仲⼈が深々と頭を下げて挨拶をしている場⾯が描かれています。贈り物は、地位・財産に応じて算定されますが、多くの場合は⾼価なもの。花嫁はそれをすぐに、⾃分を育ててもらった感謝のしるしとして両親に捧げます。
 

【祝⾔】
⻑く幸福な⽣涯の縁起物である松と鶴が飾られた台を中⼼に祝⾔が⾏われ、愛と貞節のしるしとして新郎新婦で盃を交わす三々九度が描かれています。花嫁の⽩装束は死装束であり、新しい夫の家の⼈に⽣まれ変わるため、友⼈・縁者と死別する象徴として着るとされています。

【病臥】
夫婦の間に苦楽をともにした多くの歳⽉が流れ、ついにはあの世とこの世をむすぶ無情な病がやってきます。⼿前の部屋では、アサガオのそばで⾃然の体⼒もなくなってきたやせ細った⽼⼈が介抱され、奥の部屋では薬を調合する様⼦が描かれています。

【死去】
屏⾵が逆さになっているのは、死⼈が出た喪のしるし。外塀には死の匂いを慕うとされるカラスが群がっており、診察にやってきた医者もそれを⾒かけると医者の助けを要しないと知って、さっさと帰って⾏きます。僧侶が死者の魂を休めるために祈祷し、家⼈は悲しみに泣き崩れています。

【葬列】
出棺から葬儀場までの道中の様⼦で、松明、故⼈の名前などを記した⼤旗・⼩旗、⾹炉、位牌に続いて、中⼼部には⽩い神輿に載せられた棺が運ばれています。⽇本独⾃の死の作法は、⻄洋⼈の⺠俗学的関⼼を集めたのか詳細に描かれ、『⽇本』においても⼀連の関連図版が収録されています。

【葬列の迎え】
寺院における葬式の様⼦で、簡素な祭壇の上に位牌を安置し、その傍で4⼈の僧侶がお勤めを⾏っています。本堂⼊⼝の脇には仮設の⼩屋が設けられ、合葬者の名前を帳⾯に控えています。奥に腰かけている⾼位の僧侶が冥福を祈る⾔葉を投げかけて、故⼈を弔う葬儀が終わります。

COLUMN

⻑崎中国⽂化の源流|もう⼀つの出島 唐⼈屋敷

鎖国時代、⻄洋との貿易窓⼝ 出島と対を成していたのが、東洋との貿易窓⼝ 唐⼈屋敷。唐⼈屋敷は貿易でやってきた中国⼈たちが帰国まで過ごした特区で、⻑崎くんちにも登場する「⿓踊り」、⽉琴、笛などの演奏にあわせて役者が演技をする「唐⼈踊り」、故⼈を弔う精霊流しの起源とされる「彩⾈流し」などの様々な⾏事が⾏われ、⻑崎の⺠俗⽂化形成に⼤きな影響を与えました。
中国貿易・唐⼈屋敷の様⼦は、シーボルトお抱え絵師 川原慶賀の代表作《紙本著⾊ 唐蘭館の図(唐館図)》において多くの場⾯が描かれています。

⻑崎中国⽂化の源流|もう⼀つの出島 唐⼈屋敷-1

《紙本著⾊ 唐蘭館の図(唐館図)》より「⿓踊」(所蔵:⻑崎歴史⽂化博物館)

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