2025年インバウンド動向総括レポート― 韓国が牽引、台湾に影、欧米豪に伸びしろ ―

2026.08.27 更新

2025年に長崎市を訪れたインバウンド客の分析を行いました。
なお、データは主に「モバイル空間統計」を利用しておりますが、この中には日帰りのクルーズ客が含まれておりません。

数で全国に後れを取るが、宿泊は好調

長崎市のインバウンド訪問客数は、前年比+9.8%と1割近い伸びを見せ、過去最高を記録しました。一見すると好調なように思えますが、実は全国平均(+15.8%)を下回っています。一方、延べ宿泊者数は+27.4%と全国(+8.2%)を大きく上回り、九州各県と比べても突出しています。これは後述のとおり、宿泊率(訪問客のうち宿泊する人の割合)が高い韓国・中国が伸び、日帰り客の多い台湾・タイなどが減少したことに加え、もともと滞在日数の長い欧米豪市場も伸びたことが要因と考えられます。 平均宿泊日数は1.59泊から1.76泊へ伸びました。つまり延べ宿泊者数の増加は、約半分が「泊まる人が増えたこと」、残り半分が「一人ひとりが長く泊まるようになったこと」によるものです。

【増加】韓国、中国、欧米豪 ⇔ 【減少】台湾、香港、シンガポール、タイ

宿泊者数が大きく伸びたのは、韓国(前年比123%)、中国(145%)、欧米豪(カナダ478%、オランダ134%、フランス140%、ドイツ124%、オーストラリア112%)です。韓国・中国は宿泊率(訪問客のうち宿泊する人の割合)が7割前後と高く、欧米豪はもともと1人あたりの滞在日数が長いことが、それぞれ延べ宿泊者数を押し上げた要因と考えられます。一方、減少したのは台湾(88%)、香港(72%)、タイ(77%)、シンガポール(93%)で、特に台湾(宿泊率64%)・タイ(同56%)は日帰り客の比率がやや高い市場です。宿泊率の高い市場が伸び、日帰り客の多い市場が減ったという市場構成の変化が、延べ宿泊者数の増加につながったと考えられます。
 

  国・地域 前年比
1位 韓国 123%
2位 台湾 88%
3位 中国 145%
4位 アメリカ 107%
5位 香港 72%
6位 シンガポール 93%
※出典:モバイル空間統計(日帰りのクルーズ客は含まないデータです)

東アジアの動向

韓国からの宿泊者数が増加した主な要因は、大韓航空の長崎〜ソウル定期便が2024年10月27日に就航し、2025年が通年運航の初年度となったことと考えられます。一方、台湾・香港からの宿泊者数が減少した背景には、2025年7月に大地震が発生するという「予言」デマの影響により、旅行を控える動きが広がったことがあると考えられます。
ただし台湾については、全国的には前年比113%とプラス傾向にある一方、長崎市では前年比88%と減少しました。九州の他県では2025年夏の「予言」デマの影響から回復が進んでいますが、長崎市は台湾からの直行便がないこともあり、需要の回復が遅れている可能性が高いと考えられます。

【POINT】ボリューム市場の台湾が減少傾向の中、どうやってボリューム(数)を増やすか

欧米豪市場の動向

長崎は、欧米豪市場において全国レベル、九州でもトップの認知度を誇ります。2026年1月に米紙ニューヨーク・タイムズ(電子版)の「52 Places to go 2026」に選ばれたことも追い風となり、今年もさらなる増加が期待されます。
一方で、長崎市は「被爆地」としての高い知名度ゆえに、訪問先が原爆資料館・平和公園に集中しており、原爆以外のイメージが弱いという課題もあります。特にアメリカ市場は、長崎への日帰り訪問が44.7%、1泊が23.7%と短期滞在が中心です。宿泊を伸ばすためにも、「平和・原爆」を入り口として、食や宿、その他の体験の魅力も合わせて伝えていく必要があります。

【POINT】平和・原爆を入り口として、長崎の魅力をより伝えるには?

DMO NAGASAKIの取組み

ここまでで、2つの課題(ポイント)が見えてきました。それぞれについて、これまでのDMOの取組みと今年度の取組みをご紹介します。

【POINT】ボリューム市場の台湾が減少傾向の中、どうやってボリューム(数)を増やすか
2025年度は西九州新幹線沿線の自治体およびJR九州と連携し、台湾・香港市場に向けたプロモーションを行いました。西九州新幹線レールパスを用いて沿線市町を周遊するモデルコースを作成し、台湾・香港向けの訪日メディア(Facebook、YouTube、Instagram、広告など)の全てでNo.1のユーザー数を誇るジーリーメディア社と連携してプロモーションを実施しました。公開した記事は、目標の2倍以上となる6,600PV(閲覧数)を記録しています。長崎は九州で唯一飛行機の直行便がなく、苦しい状況にありますが、JRを利用した福岡からの誘客に取り組みました。
2026年度のDMOによるインバウンドプロモーションは、直行便が就航する韓国市場に特化します。長崎市にとって最大のインバウンド市場である韓国からの訪問者をさらに増やすため、個人客向けのオンライン旅行会社(OTA)を活用し、「グルメ」「体験(ゴルフ)」「映え」などのコンテンツを軸にプロモーションを展開します。あわせて、海外のメディアやインフルエンサーを招聘し、海外目線での長崎の魅力を発信していきます。

【POINT】平和・原爆を入り口として、長崎の魅力をより伝えるには?
2025年度は、長崎県観光連盟と共同で、「被爆80年・平和」をテーマとした情報発信を行いました。長崎県の英語版観光サイト「Discover Nagasaki」の特集ページ「Praying for peace in Nagasaki in 2025, 80 years since the dropping of the atomic bomb」への流入を増やし、長崎市の認知を拡大するため、英語圏の旅行者の定番サイトである「japan-guide.com」にバナー広告を掲出しています。広告配信の際は、日本行き航空便の就航空港の所在地等を踏まえ、アメリカのカリフォルニア州、テキサス州、フロリダ州などにターゲットを絞って実施しました。バナークリックの結果を見ると、ニューヨーク、シカゴの2都市がロサンゼルスを上回り、東海岸でも一定の関心があることがわかりました。そのほか、Discover Nagasaki内に制作しているクルーズ客向け特集ページの中に、新たに「和」「和華蘭」「夜のグルメ」をテーマにしたモデルコースを追加し、原爆資料館以外の楽しみ方を提示しています。
また、DMOの別の取組みとして、平和・原爆にとどまらない長崎の魅力を伝えるため、伝統工芸体験、長崎検番のバックヤードツアー、包丁研ぎ体験、かんころ餅づくり体験など、個人では通常体験できない高付加価値コンテンツを造成し、販売に向けて磨き上げを行ってきました。2026年度は販売活動により一層力を入れ、個人客への訴求に加え、MICE参加者向けのエクスカーションとしても提案していきます。

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